遠心フィルターの清掃とクラッチの点検

CGL125 メンテナンス

ここ何ヶ月か経年による不具合などあってメンテナンス続きの我がCGL125。
今回はそろそろ見ておいたほうがいいなと感じていたクラッチ周りの点検をしてみますよ。

クラッチが滑ったりとか特に目立った不具合を感じていたわけではありませんが、年末には購入後8年目に突入する事もあって、これまで一度も点検してこなかったクラッチの状態確認とフィルターローターの清掃をする事にしました。

クランクケースの右クラッチカバーを外すと見えるクラッチですが、これを点検するためには右横に見えるフィルターロータを外さなければなりません。
しかしこのフィルターローターを固定している三本の皿ネジがかなり硬く締め込んである事から外す際にこれをなめてしまった方もいるようです。
第一の難関のカバーが外せたとしてもさらにこのフィルターローターを固定しているナットを外すのに特殊工具必要で、こちらもかなりな高トルクで締め上げてありこれを外すのが今回の作業の第二の難関と言えるでしょう。


一部では同じエンジンを積んでいるCG125にはオイルフィルターが装備されていない、との発言がちらほら見受けられますが、いわゆる一般的な濾過するタイプのものが無いという事であって、遠心分離型のフィルターローターが装備されているわけです。
数万キロ走行後でも拭き取る程度の汚れしか無い事から頻繁に清掃するものでもありませんが、堆積した汚れの状態などからエンジンの健康状態が把握できるなど、一定期間ごとの清掃は実施したほうが良さそうな部分といえます。


さて作業に先立って、先月に約25年前に購入して未開封だったオイルを半分ネタで投入しましたが、まずはこれを抜く事からはじめましょう。
黒く変色していたものの適度な粘度を保ち実際の走行でも不具合は出ませんでしたが、そこはやはりネタとはいえ心配なので約一ヶ月間の使用ですがオイルは交換する事とします。

いつも通りの手順で古いオイルを排出。
今回は久しぶりにオイルストレーナーキャップを外して中の網の状態を確認しました。
25年もののオイルの影響もなく、ごく細かなゴミの付着程度で状態は良好。

ストレーナー受け側の状態も目立った汚れはなく問題なし。
この部分ってあまりじっくり見た事ないでしょ?
こんな感じになってるんです。

オイルも抜けきったところで右クランクケースカバーの取り外しにかかりましょう。
この右カバーを外すためには事前に外さなければならないパーツが多く的確な段取りが必要となります。
手順としては、

  1. クラッチケーブルを外す
  2. キックアームを外す
  3. エキゾーストマフラーを外す
  4. ステップバーを外す

のあとにようやく右クランクケースカバーのボルト11本を緩めるという行程なります。

で右クランクケースカバーを固定している11本のフランジボルトを外しますが、このエンジンはM6x40が10本とM6x50が1本が上の画像のような配置で付いています。
外すには8mmのソケットが必要ですが差込み角9.5mm(3/8インチ)のものでは入らないためディープソケットか6.35(1/4インチ)のものを用意する必要があります。
ハンドルはラチェットよりTバーハンドルのほうが作業しやすいでしょう。

ボルトを外したら、よくあるパターンとしてはゴムハンマーなどで外周部を満遍なく軽く叩いてカバーを浮かすようにして外す、などという方法を見かけますがダウエルピンが二箇所あるため横方向からの打撃では簡単に外す事はできないような気がします。

で今回とった方法です。
以前教えてもらった方法ですが、上の写真にある右クランクケースカバーの四箇所の突起利用するというもの。
これは放熱効果を狙ったものではなく、ましてや飾りで付いてるものでもないらしく何に使うのか疑問に思っていましたがどうやらケースを外す際の打撃ポイント(?)だとのこと。

ようするにケースの反対側からこの突起部を適当な木の棒などで少しずつ叩いてやる事でケースが外しやすくなるという事なんですね。
(知らなかった!)

適当な木の棒が入るよう障害になるパーツを取り外し、ケースの反対側からゴムハンマーなどを使ってコツコツと軽く叩いていきます。
この時の注意点としてケースを固定しているボルトを外さず、少しネジがかかった状態にしておくという事。
こうしておけば適当な棒で叩いている最中ケースが意図せず外れたとしても落としてしまう事を防げるというわけですね。

というわけでカバーが脱落する事なくパカッと綺麗に外す事ができました。
ガスケットの破れももなさそうですがどうでしょう。

はい、右クランクケースカバーのガスケットは破れることなく綺麗に外すことができました。
これはこのまま再利用することとしましょう。
ケース内側は目立った汚れもなく7年以上経った割にはきれいなものです。

ケースが外れたところで続いてはフィルターローターカバーの取り外し。
赤丸の三箇所の皿ネジを2番ドライバーで外しますが、案の定硬くて余裕で舐めそうです(笑)
そこで登場したのがインパクトドライバー。
これはネジにあてたドライバーに打撃を加えることでたての力を回転の力へ変換するというもの。
硬く固着したブレーキマスターシリンダーのキャップを外す際に使ったことがある人もいるでしょう。

打撃一発で無事緩ませることができました!
一つ持っていても損はないです。

フィルターローターカバーが外れたら第二の難関、ロックナットの取り外しです。
ここの部分は写真のような「ロックナットレンチ」が必須となります。
サービスマニュアルを見ると指定トルク54N・mとなっているのでかなりな高トルクで締め付けられてますね。

しかもロックナットレンチで緩めようとしてもプライマリドライブギヤからクランク軸に直結していることから回り止めを施さないと軸が回転してしまうため緩めることができません。
CB125JX(JC09)のサービスマニュアルを見ると専用工具のクラッチアウタホルダ(07923-1070001)を使えと書いてありますがそんなものは持っていません。

というわけで今回はプライマリドライブギヤとクラッチアウタギヤの隙間に適当なアルミ板を挟んでロックする方法を取りました。
鉄などの硬い金属の場合ギアを破損する恐れがあるのでそれより柔らかいと思われるある程度厚みのあるアルミ板を使うのが良いようです。

フィルターロータが外れたら、

  1. リフタプレートを固定している4本のボルトとクラッチスプリングを取り外す
  2. クラッチ板などを含むリフタプレートなど一式を止めているCクリップを取り外す
  3. スプラインワッシャーを外してクラッチアウターを取り外す

という手順でクラッチ関連パーツ一式を外します。

外れたクラッチ関連一式とフィルターロータ。
洗浄しつつ各パーツの状態を見ていきます。
クラッチ板の使用限界は厚み2.6mmのところ3.0mm
クラッチスプリングの使用限界は34.20mmのところ34.9mm
ということで合格。
走行距離約35,000kmなのでこんなところでしょうか。
なかなか耐久性はありそうですね。

その他各パーツの洗浄と異常な摩耗などないか点検を実施。

続いて今回のメンテの注目点の一つ、フィルターロータの汚れ具合の点検。
見ての通り(見にくいですが)大きな影響になりそうな目立つ汚れはありませんでした。
ウエス等で拭き取ってみると粘り気のある金属粉のようなものの混じった汚れが付着しており、遠心分離フィルターの役目をしっかり果たしてくれていることが確認できました。

各パーツを洗浄し組み立て工程に移ります。

マイナスドライバーを挟んでギヤをロック

クラッチ回りのパーツを組み立てフィルターロータのロックナットを締め付ける段階で今回最大の難関に遭遇してしまいました!
というのも、外す時はプライマリドライブギヤとクラッチアウタギヤの隙間にアルミ板を挟むことでギヤのロックができましたが、反対に締め付け時には逆回転してしまうギヤのロックができないことが判明。

どうしよう!と、10分ほど悩みとった手段は、プライマリドライブギヤとオイルポンプギヤの間に適当なマイナスドライバーを指し込むという方法。
確かにこれでロックすることはできますが、54N・mもの高トルクで締め付けるためギヤ欠けの可能性を考え細心の注意を払い慎重に締め付けていくことが必要となります。

どうにかすべてのパーツを組み付け、新しいオイルを投入して作業は完了・・・

となったはずでしたが、エンジンを始動すると、ペチペチともカチカチともなんとも言い難い甲高い異音が発生。orz
通常であればタペット音だろうと思うような音でしたが、今回の作業ではシリンダーヘッド回りには一切手を触れてないからその可能性は低い。
作業前はこんな音はしてなかったことから作業行程のどこかでミスをした可能性が捨て切れません。
クラッチ操作や変速など動作には全く問題はなし。
一抹の不安があるもののその後の試走でも動作には全く問題が起きませんでした。

ただ作業工程中いくつか部品の取り付け順に自信が持てず、マニュアルやパーツリストを見ているうちにどんどん不安感が増しましたがその日はとりあえず寝ることにしました(笑)


開けて翌日。
とりあえず前日は全く触れていなかったタペットクリアランスの確認をしてみることに。
しかしこちらは規定値のin側out側共に0.08mmで正常値。

はぁ〜、いよいよ前日の作業を辿って見るしかない状況に。
ただ二回目ともなると各パーツの取り外しもサクサク進み、まずは第一に疑わしい箇所に到達。

フィルターロータのロックナットと共に締め付けるロックナットワッシャーの裏表。
作業後に気がついた部分ですが、このロックナットワッシャーには取り付け位置の裏表があるらしく、片側には「OUT SIDE」の刻印が。
(ちなみにロックナットは「面取り側を内側に向ける」との記載あり)
案の定、表裏逆に取り付けてありました。orz

まあとりあえず間違った取り付けを修正することができたのでこれはこれでヨシ!
続いてクラッチ関連パーツの取り付け順などを確認しましたが他にはとくに異常らしき箇所は見当たらず。

で、各パーツを元どおりに組み上げて、抜いたオイルを戻しエンジンを始動。

カチカチ音は消えませんでした!

失意の中少しでも不具合箇所の特定に繋がるのなら、ということで秘密兵器登場。
サウンドスコープです!
いわゆる聴診器ですね。
エンジンがかかった状態で聴診器を当ててノイズの発生源を探ろうというわけです。

カチカチ音の発生している箇所を中心に各部に聴診器をあて音を聞いていくと、特にカチカチ音が目立つ箇所を発見。
カムフォロアーの軸の部分ですね。
回転に応じてカチカチ音も変化していくのでどうもここらあたりが怪しいようです。

思えば三年前に装着したCG125用ローラーカムフォロアー。
純正スリッパーアーム式カムフォロアーに比べ、カムと接触するスリッパー部分をニードルベアリング入りローラーに置き換えた社外品のパーツを装着した部分でもありました。

静穏化や耐久性向上などが謳われていましたが、確かに摩擦は減ってトルクが向上したような気もしたのも事実。
しかし単純なスリッパー式から複雑なベアリング入りローラータイプに置き換えるわけですから故障の確率も高くなるだろうということで、装着以来三年が経過したこの夏に点検はしなきゃいけないなと思っていた矢先でもありました。
実際のところシリンダーを開けてローラーカムフォロアーの状態を見てみるまで不具合箇所として特定はできませんが、上記のことから点検時期だろうとは思っていたのでどちらにせよもう見過ごすわけには行かなくなりました。

というわけでクラッチとフィルターロータの点検はできたものの異音対策とローラーカムフォロアーの点検も兼ねて次回またエンジンを開けることを決心し今回のメンテは終了!w
(これが解消されるまで遠出はできないなぁ)

コメント

  1. 一難去ってまた一難ですね。でもバラした所でなくて良かった。

    • >一難去ってまた一難ですね。でもバラした所でなくて良かった。

      コメントありがとうございます!
      一難去ってまた一難。
      まさに今年はその連続でまともにツーリングもできてません(笑)
      そろそろ八年目に入ろうかというバイクですから経年による不具合も致し方なしですがさすがに疲れましたw

  2. お疲れ様です。
    異音のきっかけがもしかして回り止め作業でオイルポンプギアの軸が曲がったのか?と想像し
    てみましたが、サウンドスコープ検査でカムフォロアー付近という事であれば勘違いかな。
    とにかく究明は大変ですが、丁寧な作業と観察で原因が見つかる事をお祈りいたします。
    幸い気温が低くなってきたから「重い腰を上げる」のも少しは楽でしょう。w

    • コメントありがとうございます。

      そうですね、ポンプギアの軸は指定外の方法での締め付けですから不具合の可能性はあり得るかもしれません。
      その他フィルターロータのキャップを外す際に使ったショックドライバーの影響など考え始めるとあれもこれもと心配になってくる状態ではありますね。

      カムフォロアーについては開けてみなければわかりませんが、以前から三年を目処に確認してみるつもりだったのでこれが今回の不具合の原因ならばむしろありがたかったりしますw

      暑さが去って作業しやすい気候になってきましたが、どうも週末の天気があやしいようなので焦らず腰を据えて対応していこうと思っているところです。

  3. アルミ板よりウエスをかましたほうがいいです。ギアを入れて、リアブレーキを誰かに踏んでてもらってもいいです。

    • コメントありがとうございます。
      みなさんいろいろな方法で外してるようですね。
      とりあえず「ギアホルダー」なるものを買ってきたので次回はこれを使ってみようと思います!

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